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システムアーキテクチャ / AI設計 / architecture

AI業務システムの参照アーキテクチャ

AIの答えをそのまま業務処理に使わず、確認・承認・実行を分ける全体構成を示します。必要情報(Context)の準備から監視までをつなぎ、誤生成が業務へ届く経路を制御します。

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  1. 改訂

    AIの候補を既存システムへ渡す際の検証・承認・実行と、失敗時の状態確認を整理した

  2. 公開

architecture

読む目的: AI導入・責任・評価

目次
  1. AI業務システムの参照アーキテクチャ
  2. 結論
  3. 1. 全体構造
  4. 2. Systemを構成要素の組として表す
  5. 3. Planeで責務を分ける
  6. 4. Input Boundary
  7. 5. Context Assembly
  8. 6. Model Runtime
  9. 7. ValidatorとDecision Gate
  10. 8. Approval BoundaryとExecution Boundary
  11. 9. 誤りを影響へ変えない
  12. 10. Riskに応じた最小構成
  13. 11. 三つの適用例
  14. 12. Observationと運用
  15. 13. 参照アーキテクチャの確認項目
  16. 事実・説明モデル・設計仮説
  17. 参考資料

AI業務システムの参照アーキテクチャ

種別:参照アーキテクチャ / 設計原則 / 実務上の仮説
適用対象:生成AI、RAG、QAチャット、AIエージェント、コード生成、業務自動化
対象工程:入力 / Context構築 / 生成 / 検証 / 承認 / 実行 / 監視

結論

AI業務システムは、モデルへ入力を渡して回答を受け取るだけの構成ではない。

少なくとも、次を分離する。

  • 入力と範囲判定
  • ContextとEvidenceの構築
  • 候補生成
  • 形式・根拠・Policyの検証
  • 採用・承認
  • 外部Systemへの実行
  • 実行後の監視と改善

中心原則は次である。

生成できること、受理できること、実行してよいことを、別の境界で判定する。

このページは特定Cloud、Framework、Model製品の構成図ではない。AI適用判断からLifecycle / Operationsまでの設計原則を、一つの業務Systemへ接続するための論理Architectureである。


1. 全体構造

1. 全体構造の構造図 1. 全体構造の構造図

この図のLoopは、AIが自己判断で改善・本番反映することを意味しない。監視結果を、責任主体がKnowledge、Prompt、Model、閾値、Workflowの変更判断へ戻す経路である。


2. Systemを構成要素の組として表す

AI業務システムを、説明用に次の組として置く。

S=(X,C,M,V,G,A,E,O)\mathcal{S} = (X,C,M,V,G,A,E,O)
記号構成要素主な責務
XXInput Boundary入力受付、認証、分類、対象範囲の確定
CCContext AssemblyInstruction、Knowledge、Evidence、状態の構成
MMModel Runtime分類、生成、推奨、Tool Call候補の作成
VVValidatorSchema、根拠、Policy、整合性の検証
GGDecision Gate受理、拒否、追加質問、移管の判定
AAApproval Boundary権限者による採用・実行許可
EEExecution Boundary許可された外部作用の実行と制限
OOObservationLog、Trace、評価、Incident、変更管理

一つの製品が複数の役割を実装してもよい。ただし、論理上の責務と権限は分ける。


3. Planeで責務を分ける

Plane含むもの守る対象
Data / Knowledge Plane正本、文書、Vector Index、Metadata、履歴版、由来、鮮度、Access Control
Model PlaneModel、Prompt、Sampling、Tool選択候補入出力契約、Model Version
Control PlaneRouting、Workflow、再試行、停止、Budget状態遷移、上限、冪等性
Assurance PlaneTest、Validator、Judge、Human Review検証独立性、閾値、Evidence
Execution PlaneAPI、DB、Repository、通知、業務処理認可、可逆性、対象、影響範囲
Governance PlaneOwner、Approval、Audit、Incident、ChangeAccountability、記録、再評価

Model Planeの品質が高くても、Execution Planeの権限が過大なら安全ではない。

逆に、Model出力が不完全でも、Assurance PlaneとExecution Boundaryが適切なら、誤りを候補段階へ閉じ込められる。


4. Input Boundary

入力時点で、次を確定する。

  • 誰が要求したか
  • 何を対象とするか
  • どのDomain・Version・時点か
  • AIが回答・処理してよい範囲か
  • 誤った場合の影響は何か
  • 機密・個人情報・外部Contentを含むか

入力をそのままInstructionへ連結しない。

外部ContentはDataとして扱い、PolicyやSystem Instructionを上書きする権限を持たせない。


5. Context Assembly

一回の処理 kk に渡すContextを、次のように分ける。

Ck=I⊕Xk⊕Zk⊕Tk⊕HkC_k = I\oplus X_k\oplus Z_k\oplus T_k\oplus H_k
  • II:固定Instruction、Role、出力契約
  • XkX_k:今回の入力
  • ZkZ_k:検索されたEvidence
  • TkT_k:Tool結果と現在状態
  • HkH_k:選別・要約された履歴

Context Assemblyの責務は、情報を最大量入れることではない。

  1. 正本から現在Versionを取得する
  2. 対象と権限で絞る
  3. 入力に関連するEvidenceを検索する
  4. 由来、時点、適用範囲を付ける
  5. InstructionとDataを識別可能にする
  6. Context Budget内で優先順位を付ける

RAGの検索結果はEvidence候補であり、正答そのものではない。


6. Model Runtime

Modelの責務は、許可されたContextから候補を生成することである。

P(Y∣X,C,I,M,D)P(Y\mid X,C,I,M,D)

Model Runtimeへ持たせるもの:

  • 分類・要約・生成・推奨
  • 不足情報の指摘
  • Tool Call候補と引数候補
  • Evidence ID付き主張候補
  • 定義済みSchemaの成果物候補

Model Runtimeだけへ持たせないもの:

  • 認可の最終判定
  • 金額・件数の強制上限
  • 本番反映の最終承認
  • Audit Logの改変権限
  • Incident時の停止判断の全権

7. ValidatorとDecision Gate

検証を一つの「AI評価」にまとめない。

検証層確認内容代表的な実装
Syntax構文として読めるかParser
Schema型、必須Field、形式JSON Schema、型検査
ReferenceID、対象、Versionが存在するかDB照合、Repository検索
Grounding主張がEvidenceで支持されるかClaim分解、根拠照合
Policy許可範囲、機密、禁止操作Rule Engine、Policy Check
BehavioralTask、境界、拒否が期待どおりか評価Set、Regression Test
Business業務上採用できるかHuman Review、権限者承認

Decision Gateは、二値の合否だけでなく次の終了状態を持つ。

g(Y)∈{answer,clarify,reject,escalate,approve_candidate}g(Y) \in \{answer,clarify,reject,escalate,approve\_candidate\}
  • answer:低影響で、必要な検証を通過
  • clarify:入力不足のため追加質問
  • reject:対象外または禁止
  • escalate:人間判断が必要
  • approve_candidate:権限者の承認待ち

8. Approval BoundaryとExecution Boundary

AIが返すのは候補であり、既存システムへ登録する確定値ではない。形式が正しい候補でも、対象の誤り、根拠不足、権限不足が残るため、承認と実行を分ける。

AIの候補
  ↓ 型・対象・根拠・業務規則を検証
承認待ちの候補
  ↓ 権限者が対象・値・操作を確認
承認済みの要求
  ↓ 既存システムが認可・現在状態を再確認
実行結果を記録

例えば登録業務では、AIに自由文の依頼を直接DB更新させるのではなく、対象IDと値を持つ登録候補を作らせる。既存システムがIDの存在、許容値、現在の業務状態を照合し、必要な承認を通した要求だけをAPIへ渡す。

承認した対象・引数・版を固定し、承認後にAIが別の操作へ書き換えられないようにする。承認から実行までに権限や対象状態が変わった場合は、再確認または差し戻しを行う。

実行境界決めること
主体と対象誰の権限で、どの資源へ、何を実行するか
制限件数・金額・時間・操作の上限と、許可しない経路
重複と失敗冪等性、タイムアウト時の結果照会、再試行の条件
回復と記録取消し・切り戻し、復旧担当、承認内容と実行結果の追跡

通信が途切れた場合は、失敗したと推測して再実行せず、要求IDから結果を照会する。部分的に実行された場合も、成功と一括扱いせず、回復できる状態を記録する。

承認者と確認対象の設計はAI出力の責任境界とHITL、情報漏えいと権限逸脱の対策は生成AIセキュリティと脅威モデリングで扱う。ここでは、それらを生成・検証・承認・実行の境界へ配置する。


9. 誤りを影響へ変えない

生成の誤り、検証の見逃し、未承認の実行、復旧の失敗は、異なる境界で制御する。モデル精度が高くても、生成器に実行権限と承認権限を集めれば、残った誤りが業務へ届く。

誤りを候補の段階へ閉じ込め、検証できない場合は拒否・追加質問・移管へ戻す。制御層ごとの対策と限界はハルシネーションの多層制御設計で確認する。


10. Riskに応じた最小構成

Risk自動化範囲必須境界
低下書き、検索補助、可逆な個人作業出典表示、利用者確認、Log
中社内QA、分類、変更候補範囲判定、根拠検証、拒否・移管、監視
高顧客影響、権限変更、金銭、契約、本番変更独立検証、権限者承認、最小権限、段階実行、Rollback

Riskが高いほどAIを使えない、という意味ではない。自動確定・自動実行できる条件が狭くなる。


11. 三つの適用例

QAチャット

質問 → 範囲判定 → 検索 → 回答候補 → 根拠検証 → 回答/追加質問/拒否/移管

自動回答率だけでなく、Coverage、Selective Risk、検索失敗、移管後の解決を測る。

コード保守

変更要求 → Repository調査 → 影響候補 → 人間の方針判断 → 差分生成 → Build・Test → Review → Release承認

AIへ書込み権限を与えても、本番Release権限まで与える必要はない。

複数AI

各AIを人格ではなく、Task、Context、Tool、Permission、Artifact、Verifierの組として定義する。

未検証の自然言語をそのまま次のAIへ渡さず、Schema、Evidence、状態を持つArtifactへ変換する。


12. Observationと運用

次を一つのTraceとして追跡できるようにする。

  • Request ID、利用者、時刻
  • Model、Prompt、Knowledge、Index、ValidatorのVersion
  • 取得したEvidenceと検索Score
  • Model入出力とTool Call候補
  • Validation結果と拒否理由
  • 人間の修正・承認・差戻し
  • 実行対象、実行結果、Rollback
  • 利用者FeedbackとIncident

すべての生Dataを無期限保存するという意味ではない。機密性、最小化、保持期間、Access Controlを同時に設計する。観測から対応へつなぐ指標はAIシステムのオブザーバビリティとSLO設計、構成を変更する際の評価・切り戻し・終了はAIシステムの変更・再評価設計で扱う。


13. 参照アーキテクチャの確認項目

  • 生成、受理、承認、実行を分離した
  • Instruction、Knowledge、Evidence、状態を識別できる
  • 外部Contentを命令として無条件に扱わない
  • Model外のValidatorとExecution Boundaryがある
  • 回答、追加質問、拒否、移管を正式な終了状態にした
  • Toolごとの権限、対象、上限、冪等性を定義した
  • ProvenanceとVersionをTraceできる
  • 監視、停止、復旧、再評価のOwnerがいる
  • Risk別にHuman Reviewと自動化範囲を変えた

事実・説明モデル・設計仮説

一般的なSystem設計として扱うもの

  • 最小権限、認証・認可、監査、変更管理、段階Release、Rollback
  • Software Componentを責務と境界で分離する考え方
  • AI RiskをModelだけでなくSystem Lifecycleで管理すること

このページの説明モデル

  • S=(X,C,M,V,G,A,E,O)\mathcal{S}=(X,C,M,V,G,A,E,O)
  • 六つのPlane

設計仮説

AI固有の不確実性をModel内部だけで解消しようとせず、検証、権限、実行、監視の境界へ分散すると、誤りを業務影響へ変える経路を制御しやすくなる。


参考資料