事例実践事例 / 公開物 / case
第6章 人が読む仕様とAIが使うKnowledgeを分ける
人がシステムの全体像を理解する図と、AIが必要な根拠を探す資料を分けます。図とMarkdownを使い、文脈を残しながら、RAGが取得する情報の範囲を整理します。
2026年3月更新履歴
読む目的: 自然言語サービス・RAG・ナレッジ / AI × ソフトウェア開発 / 事例・実務
このBookの目次(全12章)
- 全体構成
- 第1章 仕様を答えられない状態から、復元すべき情報を決める
- 第2章 対象システムの変更を妨げる構造と知識の不足を整理する
- 第3章 調査の起点を作るため、ファイルとクラスの役割を整理する
- 第4章 コードから仕様と依存関係を復元する
- 第5章 処理の流れを復元し、変更影響を追えるようにする
- 第6章 人が読む仕様とAIが使うKnowledgeを分ける
- 第7章 UI操作と内部処理を結び付け、操作結果を追えるようにする
- 第8章 復元したKnowledgeを、根拠を確認できるQAへつなぐ
- 第9章 正しさ・出典・回答拒否から、QAの利用可否を評価する
- 第10章 評価結果をKnowledgeと回答範囲の改善へ戻す
- 第11章 仕様変更に追従できるKnowledge更新フローを作る
- 第12章 QAで暗号処理を調査し、人間の変更判断へつなぐ
現在位置:第6章・全12章
確認した仕様を、誰がどう使うか
復元した構造とフローを、そのまま一つの資料形式ですべての用途へ使うことは難しかった。人が全体を理解するときには図や関係性が役立つ。
一方、QAチャットには質問に必要な条件や例外を検索し、回答へ渡せる文書が必要になる。
この事例では、人向けには構造や流れを示す視覚情報を、AI向けにはMarkdownを中心とするKnowledgeを用意した。別々の仕様を作るのではなく、確認した同じ仕様情報について、利用主体に適した表現を選ぶ分離である。
+の付いた項目を選ぶと、詳しい説明が下に表示されます。
詳しい説明
気になる項目を選ぶと、その役割や判断理由を確認できます。
確認した現行仕様
コード、UI、実動作、既存資料、担当者の知識を照合した情報を起点にしました。古い仕様書やAIの推測だけを、そのまま現行仕様として扱わないためです。
人向けの図
人が全体像を理解できるよう、処理の流れと関係を図に整理しました。仕様確認や保守時に、順序と影響範囲を俯瞰するために使いました。
AI向けの文書
AIが質問に必要な情報を検索できるよう、条件・例外・詳細をMarkdown中心に整理しました。人向けの図とは用途を分けますが、別々の仕様を作るのではなく同じ確認済み情報を使いました。
人の変更判断
背景や制約、現在の状況を踏まえ、変更するか・どの方針を採るかは人が判断しました。AIには判断材料を探させ、最終決定を自動化しない責任分担を維持しました。
QAで情報を探す
質問に関係する確認済みKnowledgeを検索し、回答の根拠へ戻れるようにしました。AIの回答だけで確定せず、仕様確認・QA・継続保守で調査結果を再利用するための構成です。
図の役割と、検索対象の役割を混ぜない
処理構造の図は流れ・分岐・関係を俯瞰するために使った。しかし、図の構造だけでは、自然言語の問いに必要な情報を意味単位で取り出し、回答文へ使う用途に合わせにくい。
Markdownでは条件、例外、詳細情報を文書として整理し、検索対象にした。図で全体を確認する用途と、文書から根拠を取得する用途を、一つの形式へ無理に押し込まなかった。
| 利用する側 | 用意した表現 | 確認すること |
|---|---|---|
| 人間 | 構造・フローの図と説明 | 全体構造、処理の順序、関係 |
| AI / QA | 構造化したMarkdown | 質問に必要な条件、例外、詳細 |
分離するのは表現であり、仕様そのものではない
同じ説明を大量に複製することは目的ではない。人向けの図と検索用文書が異なる現行仕様を表してしまえば、理解や回答の根拠が崩れる。
この分担によって、人は全体を確認し、AIは必要な知識を取得できる構成へ整理した。AIが図や文脈を一切扱えないという一般論ではなく、このQAで必要な取得単位と、人の理解しやすさを両立させるための選択だった。
次章では、内部の知識をUI操作と接続し、利用者の問いから現行の処理へ到達できるようにする。