事例実践事例 / 公開物 / case
第12章 QAで暗号処理を調査し、人間の変更判断へつなぐ
セキュリティ要件の強化に際し、QAチャットで既存方式と処理位置を調べ、変更の検討につなげた事例。AIの調査支援と、人間による組織条件・将来影響の判断を分けて振り返る。
2026年3月更新履歴
読む目的: 自然言語サービス・RAG・ナレッジ / AI × ソフトウェア開発 / 事例・実務
このBookの目次(全12章)
- 全体構成
- 第1章 仕様を答えられない状態から、復元すべき情報を決める
- 第2章 対象システムの変更を妨げる構造と知識の不足を整理する
- 第3章 調査の起点を作るため、ファイルとクラスの役割を整理する
- 第4章 コードから仕様と依存関係を復元する
- 第5章 処理の流れを復元し、変更影響を追えるようにする
- 第6章 人が読む仕様とAIが使うKnowledgeを分ける
- 第7章 UI操作と内部処理を結び付け、操作結果を追えるようにする
- 第8章 復元したKnowledgeを、根拠を確認できるQAへつなぐ
- 第9章 正しさ・出典・回答拒否から、QAの利用可否を評価する
- 第10章 評価結果をKnowledgeと回答範囲の改善へ戻す
- 第11章 仕様変更に追従できるKnowledge更新フローを作る
- 第12章 QAで暗号処理を調査し、人間の変更判断へつなぐ
現在位置:第12章・全12章
セキュリティ要件の変更で、既存の暗号処理を調べる
QAチャットの活用を始めた直後、セキュリティ要件の強化対応が必要になった。対象には開発当時の暗号方式が残っていた。どの方式を使い、どこで処理しているかを確認し、変更方針を検討する必要があった。
従来ならコードを解析し、処理と実装箇所を探し、変更可能な範囲を調べる。既存仕様書だけでは内部仕様に到達できず、詳細な知識も共有されていなかったため、調査には数日から1週間以上掛かる可能性を想定していた。この期間は従来手順の見通しであり、比較試験で測定した値ではない。
復元した知識から、方式と処理位置を確認する
内部構造をRAGとして整理していたため、QAで使用方式と該当する処理の位置を確認できた。さらにAIに変更候補と理由を提示させ、その理由を人間が検証した。
この対応では、半日足らずで対応方針を確定し、フィージビリティ確認へ移った。候補が出たことを仕様の確定とはせず、組織のルール、セキュリティポリシー、将来の影響も人間が確認した。
方針の決定と、取り組み全体の目標を分ける
この場面では、委託先へ問い合わせず社内で調査と検討を進められた。取り組み全体では社員工数25%削減・委託費半減を目標とし、取り組みでは目標の大半を達成した。
ただし、この場面だけの実測削減率や、個々の目標の達成値は公開していない。目標をそのまま実績値へ読み替えることはできない。
ここで確認できたのは、調査結果を残したことで、次の変更で方式・処理位置・選択肢を探す起点を持てたことである。委託開発費の削減はQAチャット構築の対象外としていた領域であり、今後の検討として区別する。
知識を再利用しても、変更を決める責任は移らない
この事例を通じ、古いシステムを理解する作業は、図や文書を作って終わるものではなかった。現行の処理へ到達でき、その知識を後の問い合わせや変更検討へ戻せることが必要だった。
AIは候補と理由を整理できるが、現在の状況でどれを選ぶかまで固定できるとは限らない。仕様を復元し、人とAIに適した形で参照できるようにし、採否は人間が決める。この分担が、廃止できないシステムを理解・変更できる状態へ戻す取り組みの結論である。