事例実践事例 / 公開物 / case
第8章 復元したKnowledgeを、根拠を確認できるQAへつなぐ
質問に関係する根拠を探し、実務で確認できる回答へつなぐ仕組みを整えます。RAGの検索範囲・知識の粒度・画面操作との対応を調整し、AIの生成と人間の検証を分担します。
2026年3月更新履歴
読む目的: 自然言語サービス・RAG・ナレッジ / AI × ソフトウェア開発 / 事例・実務
このBookの目次(全12章)
- 全体構成
- 第1章 仕様を答えられない状態から、復元すべき情報を決める
- 第2章 対象システムの変更を妨げる構造と知識の不足を整理する
- 第3章 調査の起点を作るため、ファイルとクラスの役割を整理する
- 第4章 コードから仕様と依存関係を復元する
- 第5章 処理の流れを復元し、変更影響を追えるようにする
- 第6章 人が読む仕様とAIが使うKnowledgeを分ける
- 第7章 UI操作と内部処理を結び付け、操作結果を追えるようにする
- 第8章 復元したKnowledgeを、根拠を確認できるQAへつなぐ
- 第9章 正しさ・出典・回答拒否から、QAの利用可否を評価する
- 第10章 評価結果をKnowledgeと回答範囲の改善へ戻す
- 第11章 仕様変更に追従できるKnowledge更新フローを作る
- 第12章 QAで暗号処理を調査し、人間の変更判断へつなぐ
現在位置:第8章・全12章
資料を検索できるだけでは、問い合わせに使えない
RAGの初期状態では、必要な情報へ到達しない、不要な情報が混ざる、同じ質問への回答がぶれる、UI操作と結び付かないという問題があった。知識を蓄積するだけでは、利用者の問いと検索対象が合わなかった。
そこで、文書の分割単位をクラス単位から機能・意味単位へ見直し、1トピック1ファイルへ整理した。長い文書へ複数の意味を混在させず、必要な根拠を取り出しやすくした。
対象外の知識で、不足を埋めさせない
回答には対象システムのKnowledgeを使い、範囲外の内容は回答せず、不明なものは不明とする制約を置いた。外部知識や推測が混ざると、説明が自然でも現行システムの根拠にはならないからである。
AIはコードの説明生成、Markdownの要約、フローとの整合確認に利用した。生成した内容は人間が検証し、確認できない情報を確定した仕様として残さない分担とした。
操作や目的から、必要な根拠へつなぐ
文書へ「操作内容(UI)・実行処理(内部)・結果(出力)」の対応を追加した。
例えば、UIから印刷を実行し、印刷処理モジュールが呼び出され、印刷ジョブが生成される、という説明である。これは対応付けの例であり、内部名称を知らない利用者の問いを処理へつなぐために使う。
メールや手順のような文脈依存の情報は、「何をしたいときか」というQA形式へ整理し、原因と対処を組み合わせてFAQにした。操作や意図を起点に探せるようにすることで、コードから作った説明を実務上の問い合わせへ接続した。
参照できる過去の判断と、今回の決定を分ける
仕様、背景事情、判断軸、制約もAIへ渡せる情報として整理した。
ただし、過去の判断を検索できることは、今回も同じ方針を採ることを意味しない。その時点の利用状況や制約によって、変更の採否は変わる。
AIは判断材料を整理・提示し、人間が現在の状況を踏まえて最終決定する。条件を完全に事前定義して自動承認する構成にはしなかった。次章では、回答内容、根拠、不明時の挙動を確認し、QAを利用できる範囲を評価する。