事例実践事例 / 公開物 / case
06. 顧客体験をどう変えたか
利用者に製品分類や専門用語を理解させず、自然な言葉と段階的な追加質問で解決へ導くUX / UIを整理する。
2026-09-28更新履歴
読む目的: 事例・実務
このBookの目次(全9章)
現在位置:第6章・全9章
内部分類を利用者へ押し付けない
従来型のQAでは、「印刷」「ネットワーク」「ドライバ」といったカテゴリや、接続方式、機種名を先に入力させることがあります。
しかし、困っている利用者が、原因や製品分類を理解しているとは限りません。
「印刷しても紙が出ない」「スキャンした文書をメールで送りたい」のように、普段使う言葉から開始できることを入口にします。システムは入力済みの情報を読み取り、回答に不足する内容だけを追加質問します。
一度に一つずつ確認する
対象機種、OS、接続方法、エラー表示を一つのフォームへまとめれば、システムは効率よく情報を取得できます。一方で利用者は、何を確認すればよいか分からず、途中で離脱するかもしれません。
そこで、問い合わせ内容に応じて、一度に一つの事項を確認します。
「印刷しても紙が出ない」
↓
対象機種は何か
↓
他のPCから印刷できるか
↓
本体にエラー表示があるか
↓
得られたContextに応じて次の質問を変える
「接続方法を入力してください」のような内部用語だけを示さず、「USBケーブル」「社内ネットワーク経由」などの具体例を添えます。機種名が分からない場合は、本体の確認位置を図で示すなど、情報の調べ方も支援します。
対話を業務状態として設計する
チャットの発話列だけを保存するのではなく、対話を次の状態へ分けます。
| 状態 | 顧客に示すこと | システムが保持すること |
|---|---|---|
| 受付 | 自由な言葉で質問できること | 原文、受付時刻、利用チャネル |
| 対象特定 | なぜ機種や環境を確認するか | 機種、版、OS、接続方法と確度 |
| 切分け | 次に試す確認を一つずつ示す | 質問、回答、実施済み手順 |
| 根拠提示 | 参照した文書と適用条件 | 文書ID、版、該当箇所 |
| 回答 | 実施手順と注意点 | 回答と根拠の対応 |
| 有人移行 | 移行理由と、引継ぎ済みの内容 | 停止理由、確認済み・未確認項目 |
この状態を持つことで、画面を閉じた、有人対応へ移った、別チャネルへ切り替えた場合でも、「何を既に確認したか」を業務データとして扱えます。
回答の見せ方を選べるようにする
複数の操作手順を一度に表示すると、製品知識の少ない利用者は、どこまで実施したか分からなくなることがあります。そのため、基本は一段階ずつ示し、操作が終わったら次へ進む構成にします。
一方、経験がある利用者や全体を先に把握したい利用者には、「全手順を表示」へ切り替えられるようにします。画像や簡潔なフローチャートも、文章だけでは操作箇所を特定しにくい場合に使います。
チャットUI自体を価値にしない
価値は、画面がチャット形式であることではありません。利用者がシステム内部の構造を理解しなくても問い合わせを始められ、必要な確認を進め、回答または有人対応へ迷わず到達できることです。
UXは生成AIの周辺装飾ではなく、業務プロセスを顧客が利用できる形へ変換する設計です。
解決できない場合も次の行動を示す
AIが止まったときに「回答できません」だけを返すと、顧客は失敗理由も次の手段も分かりません。停止理由に応じて、追加情報の確認、公開文書への案内、有人窓口への移行を提示します。
ただし、停止理由を解消できないまま質問を繰り返し、見かけ上だけ会話を続けることは避けます。
有人移行を選んだ場合は、引き継ぐ情報を顧客自身も確認できるようにします。これにより、誤った機種や症状が引き継がれるのを防ぎ、「同じ説明をもう一度求められるのではないか」という不安を減らします。