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実践事例 / 公開物 / case

05. AIをどこで止めるか

根拠がない、機種が分からない、専門判断が必要なときには、AIの回答を止めます。高影響な操作や非公開情報も停止条件として整理し、人へ引き継ぐFail Safeを設計します。

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  1. 公開

Fail Safe / HITL / 責任境界 / AI Governance

読む目的: AI導入・責任・評価 / 事例・実務

このBookの目次(全9章)
  1. 全体構成
  2. 00. このケーススタディについて
  3. 01. なぜAIを導入したのか
  4. 02. 何をAIに任せ、何を人間に残したか
  5. 03. PoCで「使えるか」をどう判断したか
  6. 04. RAG / Knowledgeをどう設計したか
  7. 05. AIをどこで止めるか
  8. 06. 顧客体験をどう変えたか
  9. 07. AIから人間へどう引き継ぐか
  10. 08. 導入後にどう育てるか
  11. 09. この事例から得た設計原則
目次
  1. 回答できそうかではなく、回答してよいか
  2. 停止条件
  3. 停止判定をシステム条件へ落とす
  4. Fail SafeとしてのHITL
  5. Confidence Scoreを単独の責任者にしない

現在位置:第5章・全9章

回答できそうかではなく、回答してよいか

生成AIは、根拠が不足していても自然な回答を組み立てられます。顧客向けQAでは、その能力を回答条件にしてはいけません。

回答の可否は、生成AI自身の自信ではなく、システム側で確認できる条件から決めます。条件を満たさない場合は、回答文を工夫して続行するのではなく停止します。

停止条件

このケースでは、少なくとも次の場合を人間への移行条件として扱います。

  • 対象機種と版に適合する根拠を取得できない
  • 追加質問を行っても原因を絞り込めない
  • 症状の切分けや個別調査など、専門判断が必要である
  • 設定変更、データ消失、安全性などへの影響が大きい
  • 顧客へ公開できない情報しか見つからない
  • 複数の根拠が矛盾し、どれを採用するか決められない

停止判定をシステム条件へ落とす

停止条件はPromptへ「不明なら回答しない」と書くだけでは実装できません。対話、検索、生成、実行の各段階で、システムが確認できる状態として保持します。

段階確認する状態停止時に残す理由
対話機種・版・症状を回答可能な粒度まで特定できたかtarget_unresolved、未確認項目
Retrieval公開可能で有効な根拠を取得できたかevidence_missing、検索条件
Evidence根拠間の対象・版・手順が矛盾していないかevidence_conflict、競合文書
判断専門判断や高影響操作を含まないかhuman_judgment_required、影響範囲
Generation回答の各主張を根拠へ対応付けられるかunsupported_claim、未対応箇所

理由コードは顧客へ機械的に露出するためではありません。有人引継ぎ、失敗分類、再評価で同じ停止を追跡するために使います。顧客には「情報が不足している」「専門担当者の判断が必要」など、次の行動が分かる表現へ変換します。

回答を止め、人へ移す条件

+の付いた項目を選ぶと、詳しい説明が下に表示されます。

回答を止め、人へ移す条件本文の工程・分岐・役割を示します。ノードを選ぶと前後の関係を確認できます。開始既存システム・工程Collecting判断・確認Retrieving判断・確認Human人間Answering判断・確認Completed既存システム・工程終了既存システム・工程回答を止め、人へ移す条件本文の工程・分岐・役割を示します。ノードを選ぶと前後の関係を確認できます。開始既存システム・工程Collecting判断・確認Retrieving判断・確認Human人間Answering判断・確認Completed既存システム・工程終了既存システム・工程

詳しい説明

気になる項目を選ぶと、その役割や判断理由を確認できます。

開始

開始。次の工程:問い合わせ受付:Collecting。

Collecting

Collecting。次の工程:必要情報がそろう:Retrieving/情報を特定できない:Human。

Retrieving

Retrieving。次の工程:適合する公開可能な根拠:Answering/根拠不足 / 矛盾 / 非公開:Human。

Human

Human。次の工程:終了。

Answering

Answering。次の工程:低リスクで回答可能:Completed/専門判断 / 高影響:Human。

Completed

Completed。次の工程:終了。

終了

終了。この工程の位置と前後のつながりを確認します。

Fail SafeとしてのHITL

Human in the Loopは、AIの回答を毎回人が承認することだけを意味しません。低リスクで条件を満たす問い合わせは自己解決へ進め、境界を越えるものだけを人間へ戻す設計もHITLです。

重要なのは、人間へ戻すことが例外処理として後付けされていないことです。停止条件、引継ぐ情報、人間が判断を再開する位置を、通常のWorkflowとして定義します。

停止は失敗ではありません。誤った回答を避け、専門性を必要な場所へ集中させるための正常な結果です。詳しい状態設計は、責任境界と状態遷移を参照してください。

Confidence Scoreを単独の責任者にしない

検索スコアやモデルの自己評価は、順位付けや調査支援には使えます。

しかし閾値を一つ置くだけでは、別機種の高類似文書や、流暢だが根拠のない回答を止められません。このケースでは、機種・版・公開可否・影響度のような決定的な条件を先に適用し、その条件を通過した候補にだけスコアを使います。

人間はAIの低スコアを承認する役ではなく、システムが越えてはならない境界の先で、専門判断を引き受けます。次章では、この停止を顧客にとって行き止まりにしないUXへ変換します。